花火にバカ騒ぎ〜見捨てられた北朝鮮人民

昨日未明から花火が7つ打ち上げられた。このテポドンとかノドンとかいう北朝鮮製の花火を巡って大騒ぎだ。
許せない。多くの識者、それからマイクを向けられた庶民がそう言う。
けど、私にはよくわかりません。なにが許せないのかが。
 
北朝鮮金正日政権がミサイルを撃ったことに不快感を感じる。それは私も感じる。
けれど、そのキムジョンイル政権の存続を許しているのは誰か?
識者たちが明らかにしている通り、これらのミサイルは主にアメリカへ向けてもメッセージである。だから花火。ミサイルが花火でない使われ方をしたらどういう報復が待っているか、金正日は知っている。金正日が知っていることを識者も知っている。
金正日がなぜそういう花火をあげるのか、識者が解説してくれている。要は、金正日政権の存続の保証をアメリカに求めているのだ、と。
識者たちは正しいことを言うとは限らないし、また正しいことを全て言うとも限らない。北朝鮮の場合も、言うべき大切なことが抜け落ちている。誰が金正日の生存を許しているか、である。
 
庶民の発言の中に、ミサイルにおカネを使うんだったら貧しい人民に使え、というまことにごもっともな意見もでていた。
識者たちは知っている。金正日がいる限り、そんなことはありえない、と。金正日アメリカに保証を求めているのは、まさしくそこ、人民は救わなくてもよい、という点だ。
こんなことにウソでも民主主義国家を標榜するアメリカがお墨付きを与えるわけにはいかない。けれどこれはやっぱり、ウソだ。おおっぴらには認められなくても、裏では認めている。認めていて、その存在を自分の為に利用しようとしている。
金正日の生存を望むのはアメリカだけではない。中国も韓国も日本もそう。生存を望んでいる。いま金正日がいなくなって困るのは、日本を含む北朝鮮周辺諸国だからだ。
 

金正日北朝鮮からいなくなると、地獄の蓋が開くのだ。飢えた北朝鮮人民2500万に救いの手を差し伸べなければならなくなる。民主主義を標榜するなら、知らん顔は出来ない。
韓国は真剣にそれを心配しているのだろう。地続きだし、なにより同じ民族だ。しかしそうなると、韓国がいままで築いてきた繁栄もオジャン。
日本だって、そう。絶対に過去の経緯が問われる。朝鮮半島が南北に分離してしまった原因が問われる。巨額の支援。中国もアメリカも。
だから今も金正日は生き残っている。そのことを金正日は知っている。識者も知っている。けれど、言わない。言えない。
それを言うと、金正日がいなくなったとき、どうすべきかを言わなければならなくなる。北朝鮮人民を見捨てろ、とは言えない。けれど、金正日がいるならば、ヤツの悪口を言っておけば済む。実は彼らにとってヤツは救いの神なのである。
 
軍備につぎ込むカネがあるなら、飢えた人々に食料を。
金正日はそうすべきだ。その主張は正しい。
けれど、それは日本にもアメリカにも中国にもあてはまることではないか。
金正日の花火におびえるようなフリをして軍備を増強する余裕があるのなら、北朝鮮人民に食料を。日本と中国とアメリカがその気になれば、できるだろう。いくらでも方法はある。
爆撃機で空から爆弾を落とすのではなく、食料を撒く。落下傘で降下するのは特殊部隊ではなく医療チームだ。強襲揚陸艦で食料を運ぶ。
北朝鮮軍は抵抗するだろうが、その抵抗を排するのは容易だろう。何も新しいミサイル防衛システムに巨額の開発費を投じるまでもない。今の米軍の通常兵器での、ごく簡単なオペレーションで済むはずだ。
 
けど、そんなことをしようと企画しない。当然だ。そんなことをしても儲からない。金正日はいなくなり、北朝鮮人民は救われ、周辺諸国はトチ狂ったミサイルの恐怖から逃れられるが、そんなことをしても儲からない。誰が?
 
今の北朝鮮の様子は、大日本帝国末期の断末魔の様相とよく似ているのだろうと思う。日本の場合、天皇というカリスマを排すわけにはいかなかったようだが、北朝鮮には同じ民族の国家、韓国がある。金正日なんてものはなくなっても大丈夫だろう。
あのときの日本が、鬼畜米英からアメリカ崇拝に変わったのは、天皇よりマッカーサーの方が偉くなったからではない。大量の物量があったからだ。同じことが現代、出来ないはずはない。
しないのには理由があるはずだ。その理由こそが重要だ。
 
しかし、それにもまして重要なのは、識者が答えられない質問「北朝鮮が崩壊したとき」、この質問になぜ識者が答えられないか、ここにあるのではないか。
回答は決まっている。「救いの手を差し伸べるべき」。間違いない。
でも言えない。言わないことに疑問も感じない。なぜ?
このことは私たちが日本国憲法第9条に定められた精神を世界に敷衍していこうとするならば、避けて通れない問題ではなかろうか? 

 
      

ついでに、北朝鮮の言い分、「花火を打ち上げるのは勝手だ」(ミサイル発射実験を行う権利を主権国家として有している)は、「靖国参拝批判は内政干渉」というのと同じだと思いました。