微妙な違い

今朝、TVを見ていたら北朝鮮拉致関連のニュースが放映されていた。
これは朝日新聞のHPからの引用だが、

金さん家族「息子に会わせて」訴え 衆院特別委

 横田めぐみさんの夫の可能性が高い韓国人拉致被害者の金英男(キム・ヨンナム)さんの母崔桂月(チェ・ゲウォル)さん(78)と姉金英子(キム・ヨンジャ)さん(47)が29日、衆院拉致問題特別委員会で参考人として意見陳述した。めまいを訴えて一時、退席した桂月さんは最後に再び席に戻り、「生きている間に息子に会わせてください。力を貸してください」と涙ながらに訴えた。

参考人質疑後のあいさつで、涙ながらに訴える崔桂月さん(左)。右は横田早紀江さん=29日午後、国会内で

 同委員会には、ほかにめぐみさんの父滋さん(73)と母早紀江さん(70)、「拉北者家族会」の崔成竜(チェ・ソンヨン)代表も参考人として意見を述べた。

 めぐみさんらの娘の可能性が高いキム・ヘギョンさん(18)について、英子さんは「弟(英男さん)や、めいのヘギョンさんに会えるかも知れないという希望を持っている」と発言。北朝鮮からの誘いがあれば「行きます、会います」と答えた。しかし「連れて帰っていいと言われたら?」との質問には「そのまま手をつないで帰ることができるとは思わない。他の家族の意見を聞かないと」と述べた。

 同じ質問に滋さんは「北朝鮮側はヘギョンさんに『お母さんは死にました』と言わせ、めぐみの死を既成事実にしようとするだろう」と述べた。早紀江さんも、ヘギョンさんに会いに行く話が02年暮れにあったことに触れ「悲しい選択だったが、会わないことにしました」と、当時の判断について話した。

見たのはNHKだったと思う。今朝のことなのに、もう記憶があいまい。困ったもんだ。NHKのHPのニュースのページを見ていたのだけど、このニュースについてはHPでは触れられていない。思い違いかな?「微妙な違い」ってやっていたと思ったのだけど。
その後、フジTV「とくダネ!」でもやっていた。来日した韓国・金英男さんのご家族と日本の家族会との立場に「微妙な違い」があると報道されていた。
 
微妙な違い? そうではなかろう。
金英男さんのお母さんは、「早く息子に会えるようしてください!」と訴え、早く北朝鮮に行って息子と会いたい、と述べた。一方で横田早紀江さんは、「北朝鮮に会いに行くと、謀略に嵌ってしまうことになる」との従来の立場を表明。北朝鮮に行く、行かないの違いを「微妙な違い」と報道したのだろうが、この違いはけっして微妙なものではないように感じた。
 
早くから家族会の政治的(?)な姿勢に対する非難はあちこちであったようだ。これまでは家族会への批判には、あまり関心がなかった。というのは、イラクでの拉致事件に際しての、家族の政治的な訴えに対するヒステリックといえる世論の反発がまだ記憶にあって、家族会の政治的姿勢に反発するのはそういった風潮の余波だろう、という程度にしか考えていなかった。

けれど、韓国のお母さんと日本のお母さんが並べられてみると、その姿勢が決定的に違っているのがわかる。
 
日本の方は、政治的なのである。
 
横田早紀江さんは、北朝鮮にいる孫に会いに行くことを断念したことについて「苦渋の選択」だと表明していた。それはウソではないと思う。さらわれた娘の子どもに会いに行きたくない祖母がいようか。行かないと決めた決断が苦渋でなかろうはずはない。
一方で、韓国の母・崔桂月さんは、そんな「苦渋の選択」はしない。彼女にとっての苦渋は選択の余地がないことだ。横田さんたちの「選択」は韓国の母にとっては考えられもしないことだろう。
 
母としての態度として、なんて比べるのは不謹慎なのかもしれないけれど「微妙な違い」なんて報道されてしまうと、気になってしまう。私は韓国の母に共感を持った。
 
日本人の家族会もいろいろと考えているのだと思う。自分たちがどのように振る舞い、どのように訴えれば、北朝鮮から子どもたちが帰ってくるのに最短のコースになるのかを。アメリカにわたってブッシュと面会したのだって、それが子どもたちのためになるからと考えてのことだろう。
 
横田早紀江さんは「北朝鮮の謀略」といったけれど、アメリカの謀略にはのっかってしまっているのではないだろうか? 
どんな理由があろうとも、とにかく飛んでいって息子に会いたいという母と、どんな理由があるにせよ、孫に会いに行かない母。この違いを微妙というか?
 
いや、この感想は素朴に過ぎるか。北朝鮮に渡って孫に会って、孫の口から「お母さんは死んだ」と聞かされたら否定できないから、とそういう発言をしていた。そうであれば、事情はそう簡単ではない...。そうするとやはり「微妙な立場の違い」となるか...。
 
いずれにせよ、今回、横田早紀江さんの口から出てきた「謀略」という言葉に違和感を感じることはぬぐえない。こういう違和感がもとで反感が広がっていくのだろうな。
日本人家族会が「政治的」に動かざるを得ないのは仕方のないことかもしれない。であるならば、アメリカの(もしかしたら、日本の一部勢力の)乗っかったことに無批判で、一方の謀略のみを批判するのは政治的に得策ではないと思う。韓国の母とならんでしまったことで、日本人の母の思いの「純粋性」が損なわれてしまったような気がする。
 
これは政治的に見ても得策ではあるまい。
 
北朝鮮拉致事件はどのように報道されてもいやな事件だけど、こうやって内輪の「温度差」みたいなものを見せられるのは尚のこと、いやだ。どうしても「勘ぐる」ことをしてしまう自分自信の下衆な品性が露わになり、それを自覚させられる。
こういったことは、個人のブログ内のことであるとはいえ、触れないのが最良の選択か?
  
そうだとも言い切れないところが、難しい。