刑法に「国家反逆罪」を創設せよ

いよいよこの国もきな臭くなってきた。

共謀罪創設の法案審議入り、政府・与党成立目指す

 テロの未然防止などのための「共謀罪」創設を柱とする組織犯罪処罰法など改正案は、21日の衆院法務委員会で、杉浦法相が趣旨説明を行い審議入りした。与党は修正案を提出した。

 政府・与党は、今国会での成立を目指している。

 共謀罪の創設は、2000年に日本が署名した国際組織犯罪防止条約の批准に向け、国内法を整備することが目的。現状では、テロに協力する容疑者の日本潜伏が判明しても、国内法に抵触しない限り逮捕できないが、共謀罪に問うことで計画段階でも逮捕が可能になる。

 改正案は当初、2003年の通常国会に提出されたが、審議が進まず、廃案や継続審議を繰り返している。
(2006年4月21日13時9分 読売新聞)

新聞でこんなふうに報道されていると大して問題にすることはなさそうだが、実はそうでもないらしい。ここらの詳しい解説は「共謀罪Q&A」をご覧ください。

共謀罪とセットで「国家反逆罪」を

「国家反逆罪」という言葉はどこかで耳にし、そういう罪が実際にあるものだと思い込んでいたが、調べてみると日本には存在しない。存在するのは「内乱罪」と「外患誘致罪」の二つ。これらの刑罰もその運用はこれまで極めて慎重に行われてきていて、実際に適用された例はほとんどないという。これは喜ぶべきことのようだが、さにあらず。共謀罪が創設されるのなら「国家反逆罪」もセットにして創設すべきだ。
過去の専制国家ならいざしらず、民主制を採用する近代国家では主権在民、つまり国民=国家である。であるから、国民が国家に反逆するなんてことは論理的にはありえないようだが、実は国民であるといえども例外に属する人々がいる。そしてその根拠は憲法に明記されている。
憲法第99条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
憲法公務員に対してのみ憲法尊守義務を課しているのには、歴史的な事情があってのことだ。過去の歴史はその大分部が、戦争と権力者による大衆への圧制である。現在に至ってもその状況にあまり変わりはないのかもしれない。とにかく、歴史の大きな流れの中で、民衆は民主主義という制度を勝ち取って来、近代憲法はその成果を踏まえて「国民が権力者に制限を課す契約」と位置づけられている。日本国憲法で第99条が設けられているのは、そういう歴史の流れがあってのことだ。つまり公務員=権力者たちは今や国家となった国民に対し反逆を犯す可能性があり、その可能性故に99条の規定がある。だとするならば、99条の規程(理念)を具体化する法律の規定があってしかるべきだ。それが「国家反逆罪」なのである。この犯罪の対象となるのはもちろん権力者のみであり、科される刑罰は死刑もしくは無期懲役だ。

自民党議員は「国家反逆罪」の共謀罪

自民党は昨年秋、憲法改定の草案を発表した。この草案は自由法曹団が「改憲クーデタ」としている通り、とても「憲法改正」とはいえない代物だ。これも詳しくは自由法曹団HPを見ていただきたいが、要点だけを指摘すると「国民が権力者に制限を課す契約」が「権力者が国民に義務を課す契約」にすり替わってしまっている。専制政治の過去ならいざ知らず民主主義が時代のルールである現代では、権力者が国民に義務を課すなどということは、もうこれは立派は「国家反逆罪」である。
自民党議員は選挙による国民の審判を経て選出された国民の代表ではないか、国民の代表の意思は国民の意思だ、という声も聞こえてきそうだが、これは違う。先の選挙は、自民党総裁が絶叫したとおり「郵政民営化」の是非を問う選挙、譲っても「小泉改革路線」を問う選挙であり、改憲の是非を問う選挙ではなかった。にもかかわらず、国会で大勢を占めた勢いを駆ってクーデターの如き憲法改正草案を発表するなど、これは法治国家の手続きの悪用で民主主義の理念を踏みにじるものだ。であるから我々国民は、当然の権利として、自民党の犯罪を糾弾する権利を持つ。
ただこれまでは、自民党憲法草案発表が犯罪的行為であるとはいえ、犯罪としての要件を満たすまでには至らなかった。また憲法改正には国民投票というハードルもあり、ことさら犯罪として指弾する必要性もなかったのだが、もし「共謀罪」が創設されるなら事情が異なってくる。自民党憲法草案は憲法99条違反の犯罪、つまり「国家反逆罪」の共謀罪として立派に犯罪要件が成立するようになる。
自民党は、教育において子供たちに「愛国心」を植え付けようと企てている。それならば大人たちにも国を愛する義務=現憲法を尊守する義務と義務を違反したときの罰則を設けるべきである。繰り返すが、この義務と罰則は公務員限定のものだ。