森林ガイド養成講座

今日は北海道大学和歌山研究林で開催された、「森林ガイド養成講座」に参加してきた。
この「森林ガイド」は、過疎地域の活性化をエコツーリズムでという、今流行のもの。
その流行の証として、募集定員に対して予想以上の応募があったとのこと。
そして、この予想以上の応募に対しては、追加講座を開くことで対応するという。
そもそも大学がこの講座を企画したのも、自然に対する意識の高まりからか、
研究林への入林希望者が増えたことに対応しようと考えたことからだそうな。
 
しかしこの自然に対する人々の関心の高まりも、
日本においてはいまだエコツーリズムの確立というところまで至っていない、と講師先生はおっしゃっておられました。
エコツーリズムの確立とは、つまり自然体験型観光が経済的に成り立つものになるということ。
そしてまた、そうでなければ過疎地域の活性化になど貢献できるわけもないのだが、
これがなかなかに難しいのだろう。各地で試みられているという話は聞くが、成功しているという話は聞かない。
私が良く通い、このブログでもたびたび触れている源流館にしても、経営的にはおそらく赤字だろうと思う。
源流館のみなさん、違ってたらごめんなさいね。
 
さて、今日の「森林ガイド養成講座」の感想であるが、まずは、“お得な”講座だったな、と。
参加費2,000円で昼食付き、そして配布してくれた資料がなかなか立派。これだけも2,000円の価値はある。
なかでも研究林の中で確認されている樹木の図鑑が2冊、これが良い。
市販の図鑑などと比較すると「本」としての出来栄えは少し見劣りはするが(もともとは学内の内部資料?)、
内容は引けを取っていないのでは。
なにより、“そのフィールドにある”樹木の図鑑というところが良い。
難点を挙げれば、立派過ぎて、実際に林の中で図鑑と照らし合わせて木を調べるといったような用途には不向き。
もしこれから研究林のフィールドに多くの人を招き入れて樹木の講習などを行うとするなら、
もう少しコンパクトなものがいいだろう。
そして出来ることなら、林内の実際の樹木と図鑑とをリンクさせられるようにしてくれればさらに良い。
これはどういうことかというと、研究林の中には「見本林」としていろいろな種類の樹木を集めてある場所があり、
その場所の樹木には表札が掲げてあったが、この表札に番号をふって、
その番号がその木を説明している図鑑のページになる、といったような具合。
そのようなことが出来れば、より“そのフィールドにある”樹木の図鑑という意味合いが高まるのではないか、と。
 
付属物の話が長くなったが、肝心の講座の内容はというと、正直「ガイド養成」というには、ちょっと淋しかったかな。
だが、これは致し方ないことだったかもしれない。
実際、研究林の森の中を案内するだけも、ちょっと内容の濃いものをやれば一日ではとても時間が足りないだろう。
今回の講座はいわば、オリエンテーションだったわけだ。
そう考えるとこれからの展開に充分に期待が持てる内容だったと思うし、
現時点では内容・日程等は確定していないものの、専門的な内容についての講座を企画してくれているようである。
いずれにせよ、「エコツーリズムの確立」というところまで到達するにはなかなか大変だろうし、
息の長い取り組みが必要だろうが、まずはそれがスタートした、ということであろう。
 
だが、せっかくなので(何がせっかくなのか、よくわからんが)、ひとつ難癖をつけておこう。
私が今回の講座で期待してことは、ひとつがどのような森に出会えるか、ということで、
これは今回は時間的な制約もあって充分満足というとこまでいかなかったにせよ、
森へはまた訪ねていけばいいのだし、研究林への通行許可証も頂いたことだし、まずまず収穫はあったというところだが、
もうひとつのほうの期待、どのような人に出会えるかということについては、あまり得るものはなかったな、と思う。
いやいや、林長をはじめ研究林のスタッフの人たちには好感を持ったし、
さすが大学の先生で、知識も豊富でこれからも興味深い話を聞けるものと期待をしているが、
せっかく集った森好きの人たち集ったのに、結局互いに自己紹介もしないままに終わってしまったのが残念だ。
研究林のフィールドの価値を共有しそこから何か新しいものを生み出していこうというのなら、
講座の主催者と参加者という関係だけでなく、参加者同士の横の繋がりも大切だと思うのだが。
そのような横のつながりの中での価値観の、共有もしくはぶつかり合いの中から、何か新しいものが生まれてくる、
主催者としてもそういうものを期待していると思うし、お話のなかでもそうのようにおっしゃってはいたんですがね。
これも次回以降に期待を持ち越しということで。
やはりまずは、アイスブレーキングが必要だな。
 
最後に研究林の森について。
429haある森の2/3は人工林だということだが、これは大学の研究林という性格からして仕方ないか。
私のように林業を職業とする人間にとっては、むしろ興味深い場所ではある。
今回の講座でも見学させてもらったが、複層林などはもう少しじっくり時間をかけて見てみたいし、
出来れば学術的な説明も聞いてみたいと思う。
また、間伐などの講座も開催できれば、というような話もあったが、そういう分野でなら少しは協力できるかも。
私自身が企画したの間伐講座を今秋、地元のエコツーリズム企画のなかで行う予定なのだが、
そういったものも研究林の中で、何らかの形で行うことが出来るとよいな、思ったりもする。
また、人工林のほかに、保存林という形で研究林創設以来ほとんど手をつけていないという森もある。
研究林となる以前は薪炭材を採集していた森ということで、大木はほとんどないということだが、
なかなかに良い雰囲気をもった森であった。
今回の講座で訪れることが出来たのはほんのわずかな部分でしかなかったのだが、
ぜひまた機会をつくって、その中を彷徨してみたいと思うような森であった。