めでたいこと

平成16年度の出生率が発表になった。1.288で過去最低を更新したという。
このままでは日本の国の人口が減っていく。
めでたいことだ。
 
ところが、どこも出生率の減少をよいことだという報道はしない。
少子化高齢化社会、人口減少は国の活力の低下を招くという。
それはその通りなのだが...
 
人口問題は環境問題の根本であるということに触れる報道がないのはおかしい。
昔の人は「国破れて山河あり」と詠んだが、もうこれは残念ながら昔の話だ。
環境問題とは、この「山河」が破れてしまうという話なのだ。
山河、つまり自然が壊れてしまって国が成り立つか?
科学万能主義に染まった人たちは、どうも成り立つと楽観しているらしい。
 
しかしおそらく、自然が破れれば国も破れるだろう。
そうなれば人口は減る。
それが自然のルールだ。
 
現代の思想では人の数を人為的に減らすのは悪である。
いや、現代だけでなく昔からずっと悪であった。
にもかかわらず人が人を殺す殺人や戦争、これらはいまだなくなってはいないが、
それでもこれらを悪と感じることには間違いない。
だがもし、自然が破れ、国が破れたら?

今日の日本の憲法には「基本的人権」が謳われ、これはひとり一人に固有の権利であるという。
こんなものは幻想でしかないと言えばそうなのだが、それでもハッピーな、守るべき幻想である。
できればこのような幻想にこれからも浸っていたい。
 
だから出生率低下はめでたいことなのである。
自然に人口が減ってゆく。よって幸せな幻想が守られる。
このまま人の数が増えていくと、この幻想が幻想でしかないと思い知らせれるときが来るかもしれない。
 
国の活力などというのは、人間の勝手な都合である。
人間の都合であるならば、人間の手でどうにかすることが出来るだろう。
しかし、自然のルールはそうは行かない。
今はまだ、かろうじて人が生存するのに都合がよい環境だが、
これが一旦崩れるともう人間の手には負えないだろう。
 
そのとき人々はどのような行動に出るのだろうか?
想像するだに恐ろしい。